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九十九十九

2009.02.01 *Sun
九十九十九 (講談社文庫)九十九十九 (講談社文庫)
(2007/01/12)
舞城 王太郎

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JDCトリビュートとして刊行された「九十九十九」。
JDCというのは清涼院流水による推理小説シリーズの名称で、日本語では日本探偵倶楽部となります。
探偵集団であるJDCにおいて探偵神とされる九十九十九はメタ探偵であり、推理に必要なデータが揃えば即座に真相に辿り着いてしまう「神通理気」の力を持つ探偵です。
JDCシリーズの始まりであり第二回メフィスト賞受賞作のコズミックは毀誉褒貶が飛び交った異色作と言われます。

そんなJDCトリビュートであるところのこの作品。
ただの世界観踏襲ではありません。
名前や設定を取り入れてはいますが、清涼院流水の世界観を正確に写し取っているのではなく、あくまで舞城王太郎の世界観で作られています。
特徴的なのが全体を通す構造で、章が変わるごとに前章が作中作の物語だった事が明らかになり、メタ視点に移行していくことになります。
作中作を扱う小説は他にもあると思いますが、「九十九十九」では作中作がただのネタではなく、作品の核心にせまる重要な位置づけになっているところが目新しいでしょう。

今回「九十九十九」を読んでやっと判りましたが、同著者作品の「ディスコ探偵水曜日」は「九十九十九」に連なる文脈の作品として考えられるようです。
大爆笑カレーや猫猫にゃんにゃんにゃん、エンジェルバニーズなどのは「九十九十九」と「ディスコ探偵水曜日」の両方に登場する名称ですし(完全な同一人物ではない)、作中世界を貫く原理原則にも似たような雰囲気を感じることができます。推理が次々と披露されていく構造も似ています。
そんな発見もありました。

複雑な物語なので要約も難しく、整合性にも若干の疑問がないわけでもありません。
しかし細かな不満を度外視しても魅力的です。
そんなこともあるのか、読み終わってからは解説をして欲しくなりました。
ここで以前に読んだことのある東浩紀コレクション「文学環境論集」に「九十九十九」に言及している箇所があったなと思い出し、読み返しました。
別に「九十九十九」の解説ではなかったのですが、それでも考察はなされているので「九十九十九」を読む際の補助線にできるかもしれません。

おそらく好みは分かれやすいであろう作品ですが、好きになれれば絶賛物の作品です。
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