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This Category : 小説

とらドラ5!

2009.02.04 *Wed
とらドラ! 5 (5) (電撃文庫 た 20-8)とらドラ! 5 (5) (電撃文庫 た 20-8)
(2007/08)
竹宮 ゆゆこ

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かなり昔に見た感覚になっている文化祭のストーリーを収録したとらドラ5!
充分な質を担保していたアニメですが、原作のシーンのいくつかはそれなりにカットしてあります。
単純に原作をなぞらずに時間枠内に収め、さらに見ごたえを保っているというアニメの力量を垣間見たり。
そんなカットされた描写の中で今回最もツボに入ったのは、文化祭の出し物を決めるホームルームにおいて明らかになった恋ヶ窪ゆり(30)の就職にまつわるストーリーです。

大学の教職課程を地道にこなし真面目に取得したゆりちゃんが就職するころは就職氷河期の山場。
ただでさえ採用がない教員採用試験に見事合格して担任まで持つようになった努力の人。
自分の力で勝ち取ったのが今の地位です。
一方、学生時代の友人の就職は中小企業がいいところで上と下で新旧のバブル世代に挟まれているし、下手をすれば派遣の不安定な身分。
何かしら確かなものが欲しい友人達が結婚にそれを求めるのは充分理解できるし、やっかんだりりません。
ゆりちゃんは自分が恵まれている事を理解しています。
ただ、同い年のいとこの子供はそろそろ中学校にあがるらしい。
それだけ。
たとえ明日に自分の子供を生んでもその子が中学校にあがるのは43歳になってからだと。
それだけのこと。

…………リアルです。
就職や仕事の話がとてもリアルです。
そう、教職課程の人は講義がとても大変らしいのです。
七限目に講義が入っていることなどざら。
何が大変だって、大学の七限は終わるのが九時過ぎになるのです。
そして教員の採用は地方になればなるほど圧倒的に少ない。
こなさなくてはいけないタスクが多いのだから一般企業の就職活動だって本腰をいれてやることもままなりません。
公務員試験は失敗したら後がなくなる危険と隣り合わせなんだ。
人生かけてるんだ。
なのに敗北感と卑屈な雰囲気が漂いまくって濃密なオーラまで漂っているゆりちゃん先生は憐れで仕方ありません。
作品の最後には幸せになっていて欲しい筆頭のキャラクターです。
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九十九十九

2009.02.01 *Sun
九十九十九 (講談社文庫)九十九十九 (講談社文庫)
(2007/01/12)
舞城 王太郎

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JDCトリビュートとして刊行された「九十九十九」。
JDCというのは清涼院流水による推理小説シリーズの名称で、日本語では日本探偵倶楽部となります。
探偵集団であるJDCにおいて探偵神とされる九十九十九はメタ探偵であり、推理に必要なデータが揃えば即座に真相に辿り着いてしまう「神通理気」の力を持つ探偵です。
JDCシリーズの始まりであり第二回メフィスト賞受賞作のコズミックは毀誉褒貶が飛び交った異色作と言われます。

そんなJDCトリビュートであるところのこの作品。
ただの世界観踏襲ではありません。
名前や設定を取り入れてはいますが、清涼院流水の世界観を正確に写し取っているのではなく、あくまで舞城王太郎の世界観で作られています。
特徴的なのが全体を通す構造で、章が変わるごとに前章が作中作の物語だった事が明らかになり、メタ視点に移行していくことになります。
作中作を扱う小説は他にもあると思いますが、「九十九十九」では作中作がただのネタではなく、作品の核心にせまる重要な位置づけになっているところが目新しいでしょう。

今回「九十九十九」を読んでやっと判りましたが、同著者作品の「ディスコ探偵水曜日」は「九十九十九」に連なる文脈の作品として考えられるようです。
大爆笑カレーや猫猫にゃんにゃんにゃん、エンジェルバニーズなどのは「九十九十九」と「ディスコ探偵水曜日」の両方に登場する名称ですし(完全な同一人物ではない)、作中世界を貫く原理原則にも似たような雰囲気を感じることができます。推理が次々と披露されていく構造も似ています。
そんな発見もありました。

複雑な物語なので要約も難しく、整合性にも若干の疑問がないわけでもありません。
しかし細かな不満を度外視しても魅力的です。
そんなこともあるのか、読み終わってからは解説をして欲しくなりました。
ここで以前に読んだことのある東浩紀コレクション「文学環境論集」に「九十九十九」に言及している箇所があったなと思い出し、読み返しました。
別に「九十九十九」の解説ではなかったのですが、それでも考察はなされているので「九十九十九」を読む際の補助線にできるかもしれません。

おそらく好みは分かれやすいであろう作品ですが、好きになれれば絶賛物の作品です。

とらドラ・スピンオフ!―幸福の桜色トルネード

2009.01.31 *Sat
とらドラ・スピンオフ!―幸福の桜色トルネード (電撃文庫)とらドラ・スピンオフ!―幸福の桜色トルネード (電撃文庫)
(2007/05)
竹宮 ゆゆこ

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とらドラのスピンオフ第一弾。
四巻と五巻の間に出されたので、文化祭ストーリーの前ということになります。
時系列としても文化祭はまだです。
主人公は第二巻のスピンオフでも主人公だった富家幸太
ヒロインは狩野すみれ兄貴の妹・狩野さくらです。

一言で言えばノロケ小説。
自称不幸体質の富家幸太が無自覚エロスの狩野さくらといちゃつくストーリーです。
端的に表現するとなんとなくアホっぽいですね…………。
読者が身もだえ、赤面するような思春期展開が続出します。
ベタとも云える物語が延々と続くので、好き嫌いは分かれるのかもしれません。
本編よりもすみれ兄貴の素行描写が多めなので、そんなお得感もあるのでは。

アニメでもほんの少しだけ顔を出していた幸太とさくらですが、実はかなりの熱々カップル(死語?)だったと。
本編の主人公たちを差し置いてのカップル成立が達成されていたわけですね。
アニメだけではわからなかったことです。
それにしてもいちゃつくときの描写が「あはん」「うふん」って(笑。

熊の場所

2009.01.27 *Tue
熊の場所 (講談社ノベルス)熊の場所 (講談社ノベルス)
(2004/12/07)
舞城 王太郎

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「熊の場所」は表題に加えて「バット男」「ピコーン!」の二作を収録した合計三作の短編集です。
表紙がとてもかわいらしいです。
でも内容はこれほどかわいらしいものではありません。

熊の場所は、僕と猫殺しの少年「まーくん」の二人のストーリー。
僕はまーくんに対する恐怖を払拭するために、あえて彼に接近していきます。
熊を撃退した経験のある父の言葉、「恐怖を消し去るには、その源の場所に、すぐに戻らねばならない」に従ったものです。
つまり熊=まーくん。
その他、「バッド男」=バッドを持った不審者≠バッドマンであり、「ピコーン!」=思いつきのアニメ的SE、となっています。
そんな三作全てにミステリらしい展開が待っています。
やはりミステリが原点なのでしょうか。

収録作で好みだったのは「熊の場所」です。
僕の視点を追っていくうちになんとなく小学生の時代を想起したりしていました。
小学校では「終わりの会」で一日が終了したり、昼休みや放課後に一つのゴールでサッカーをしたり。自分もそんなことをしたなあという想い出があります。
「終わりの会」は「帰りの会」だったかな?
自分の思い出にまーくんはいませんでしたけど。

人形式モナリザ―Shape of Things Human

2009.01.26 *Mon
人形式モナリザ―Shape of Things Human (講談社文庫)人形式モナリザ―Shape of Things Human (講談社文庫)
(2002/11)
森 博嗣

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Vシリーズの第二弾。
出て来るのは人形のモチーフです。
「人形の館」と「乙女文学」、凡そ100体に及ぶ人形の中にあるという「モナリザ」。
殺人事件にもそのモチーフは組み込まれています。

ミステリにおける犯罪や犯人について少しでも語ろうとすると、それだけで何らかのヒントになってしまうことは避けられないので悩みます。
犯人は当たりがつきそうなのかそうでもないのか。
それは意外な人物かどうか。
大番狂わせがあるのか。
いずれも先の展開が想起できてしまう情報です。
前情報は皆無な状態で読むのが一般的でしょう。
だから「意外な犯人!」とか「驚きのどんでん返しが!」みたいな煽り文句は困ります。
つまり「地球儀のスライス」で冨樫さんが言っていたことはその通りだなあ、と言いたいわけです。

こんな事を言うと書く事がなくなってしまうのですが、それでもあえて何か書くなら「びっくりしました」
の一言でしょうか。
何について驚いたのかは言及しない事にしましょう。

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